エコノミック・ゲートウェイとしての香港-「つながり」と「流れ」のなかの都市 -

執筆者 久末 亮一  (政策研究大学院大学)
発行日/NO. 2011年1月  11-J-004
研究プロジェクト 中国の台頭と東アジア地域秩序の変容
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概要

「改革開放」から現在にいたるまでの中国、あるいはこれと向きあう世界にとって、香港という都市は大きな役割を担いつづけてきた。それは単純に異なる世界との経済活動を「むすぶ」だけではなく、その異同を調節するため「ゲートウェイ」であった。この役割の起源は、19世紀半ばに開港し、「帝国の時代」の自由貿易体制に沿うかたちで、華南を基点として、東南アジア、米州、オセアニア、中国内地の華北・華中といった、多角間での各種多様なヒト・モノ・カネ・情報を集散・調節するなかで培われてきた。そして、20世紀末からの新たな世界構造による新たなグローバリゼーションの時代、特に「開かれた中国」の出現と台頭によって、香港は中国と世界、また中国とアジアの間で、ふたたびゲートウェイとして機能しはじめた。しかし、この役割は一朝一夕に確立されたものではない。それは香港という都市が、19世紀半ば以来の時間をかけて、新陳代謝を繰り返しながら受け継いできた無数の「つながり」と「流れ」を、重層的に集散・調整してきた延長線上にある。これを基底として存立する香港は、今日では従前にも増して、中国だけではなく、地域経済および世界経済に埋めこまれたなかで機能している。