執筆者 |
青木 英孝 (千葉商科大学) /宮島 英昭 (ファカルティフェロー) |
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発行日/NO. | 2010年12月 10-J-057 |
研究プロジェクト | 企業統治分析のフロンティア:日本企業システムの進化と世界経済危機のインパクト |
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概要
近年の日本企業では、多角化・グローバル化が進展し、事業ポートフォリオの複雑性が増加しただけでなく、分社やM&Aによってグループ化も進展した結果、統括部門による傘下事業の適切なコントロール、すなわち事業ガバナンスの重要性が増大した。そして、企業統治の問題としては、株主と経営者間の伝統的なエージェンシー関係だけでなく、経営者と事業部門長、あるいは親会社とグループ子会社間のエージェンシー関係という二層のエージェンシー問題に直面することとなった。
そこで本稿では、経済産業研究所が東証一部上場企業(除く金融・保険)を対象に、2007年4月に実施したアンケート調査(企業の多様化と統治に関する調査)の結果を利用し、事業ガバナンスの実態を分権化とモニタリングの観点から分析した。その結果、親会社内部の事業単位よりも完全子会社の分権度が高いこと、親会社内部の事業ガバナンスでは分権化とモニタリングの補完関係が確認できるのに対して、子会社ガバナンスではこの関係が確認できないことが示された。また、二層のエージェンシー関係では、資本市場からの圧力が強い企業や取締役会改革に積極的な企業ほど、事業単位のモニタリングも強いという関係が確認された。