設計比較優位説のプロセス的基礎

執筆者 藤本 隆宏  (東京大学)
発行日/NO. 2010年11月  10-P-016
研究プロジェクト 複雑化する人工物と設計プロセスおよび製品アーキテクチャの実証分析
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概要

本論では、筆者が理論的・実証的な考察を加えてきた「設計の比較優位仮説」に対して、設計プロセス論的な基礎を付け加えることを試みる。具体的には、公理系設計論をベースに、設計行為を、不確実性下で製品機能・製品構造の連立方程式を解く、2段階設計プロセスによって近似する。第1段階は、構造・機能の因果知識が不完全な中での暫定設計解の導出、第2段階は、その暫定設計解から、最適設計解へと漸近する試行錯誤のプロセスである。このモデルによって、アーキテクチャ、組織能力、設計調整プロセス、市場ニーズなどを定式化することにより、統合型の組織能力の遍在する日本の設計拠点が、インテグラル・アーキテクチャの製品のリードタイム競争で優位性を持つこと、および、同じインテグラル型でも、科学的知識の獲得を必要とするタイプの製品では日本企業が設計の競争優位を持てるとは限らないことを論理的に推測し、シミュレーションによって確認する。