オバマ外交の分析-その1年4カ月の軌跡

執筆者 久保 文明  (ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2010年7月  10-J-044
研究プロジェクト オバマ政権外交・安全保障政策の動向に関する研究
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概要

オバマ政権の外交チームは、民主党穏健派を中心としつつ、共和党穏健派(ないしリアリスト)のグループの連合として構築された。しかしながら、オバマ大統領自身は、民主党内で、左派・反戦派を支持基盤としてヒラリー・クリントンに勝利し、また自身の外交観も、イラク戦争に当初から反対であったことに見られるように、左派・反戦派的傾向を含んでいた。 

オバマ外交は、政権発足当初はブッシュ政権との違いを鮮明に打ち出し、イスラムとの対話、どのような国とも交渉する用意のあること、中国との協議、対ロシア関係の「リセット」などを目指した。

オバマ外交は1年4カ月経過し、大きくその基調を変化させた。成果としてはロシアとの新核軍縮条約があげられる。ミサイル防衛に関して大きな譲歩せずに、合意を勝ち取った。中国に対しては強硬策も交えるようになり、イランに対しては全面的に政策を硬化させた。外交観としては、大国間交渉を重視するリアリスト的であるとの評価も生まれつつある。