執筆者 |
安田 武彦 (ファカルティフェロー) |
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発行日/NO. | 2010年2月 10-J-020 |
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概要
近年、起業に関する研究は、(1)起業後のパフォーマンスの決定要因の分析、(2)潜在的起業家が実際に起業を選択するための決定、阻害要因の分析という概ね2つの方向で進められてきた。
本論はこの2つの研究方向を結びつける、すなわち起業志望者の起業選択時の状況がその後のパフォーマンスにどのような影響を与えるのかについて分析するものである。
そのため、独自調査による起業志望者、起業実現者のデータを基に、(1)起業選択の有無と起業後のパフォーマンスを関係づけたサンプルセレクション・モデルによる推計を行った。
分析の結果、起業志望者の起業選択を容易(困難)にする個別属性は総じて起業後のパフォーマンスを悪化(改善)させる方向に働くことが示されるとともに、個別属性以外の影響を考慮した場合も起業の容易さとその後の黒字基調との間にはトレードオフの関係があることが確認された。
このことは有望な事業機会を求めて行うプル型起業と比べ、リストラ等により起業せざるを得なくなるプッシュ型が大勢を占めていることを示唆し、政策面では起業を増加させる支援よりもそれを成功に導くための相談指導事業が重要であることを示している。