プロダクト・イノベーションと経済成長

執筆者 吉川 洋  (研究主幹) /安藤 浩一  (日本政策投資銀行設備投資研究所) /宮川 修子  (経済産業研究所 リサーチアシスタント)
発行日/NO. 2010年1月  10-J-006
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概要

前世紀に始まった少子・高齢化が、21世紀の日本の経済社会にとって最大の課題であることは広く認識されている。急激に進む少子・高齢化のもとで経済成長のエンジンとなるのが、イノベーションないし広義の技術進歩であることも今ではコンセンサスである。成長の鍵を握るとも言える「技術進歩」の計測は、従来は成長会計すなわちTFPの計測を通して行われてきたが、本稿ではそれとは異なる角度から、プロダクト・イノベーションの役割について分析する。まず、プロダクト・イノベーションがTFPとどのような点で異なるのか説明する。つづいて、ITセクターに関する実証分析を行い、ITがマクロ経済の成長にどれほど貢献したかを確認する。

TFPの計測を通して分析されるITのサプライ・サイドにおける貢献は確かに重要だが、それがITの経済成長への貢献のすべてではない。本稿では、ITが「中間投入」を通して需要が急成長する新しいモノの創出を可能にすることも確認する。需要の飽和/創出という観点からすると、需要の伸びが著しい財やサービスをいかにして生み出すか、あるいは見つけ出すか、これこそが経済成長の鍵を握ると言える。