日本企業の対中投資

執筆者 柴生田 敦夫  (RIETI元上席研究員 / 貿易経済協力局長)
発行日/NO. 2009年12月  09-P-004
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概要

本研究は、日中の経済関係における直接投資を中心として概観するものである。

まず、過去20年あまりの日中の投資関係の推移を時系列で概観する。歴史的には第一次ブーム(1985~87)、第二次ブーム(91~95)、第三次ブーム(2000~2005)と分けられる対中投資ブームにつき、その特色をフォローしたのち、日系企業の対中投資を業種別に分類し、製造業から金融・サービス業への広がりや中国の内需志向追求等の最近の動きを概観する。次に、現在の対中直接投資動向を2007年および2008年を中心に分析する。特に近時、販売機能・研究開発機能の強化や金融・保険分野への投資が増加し、また、日中企業による戦略的な提携も進展しつつあり、これらを具体例で考察する。あわせて、日系企業の対中投資が中国経済においてどのような地位を占めているか、中国政府のコメントも含めて概観する。

次に、対中直接投資に関連するいくつかの論点について考察する。対中投資に関する日中双方の統計数字の違い、西部・東北地域に係る開発戦略や中部振興戦略、「又快又好」(急速で良好)から「又好又快」(良好で急速)への経済成長スローガンの転換、製造業投資のピークアウトと投資環境の変化の中での対中投資の優位性を概観する。そして、米国発の金融危機を踏まえた中国経済につき、今後の日中投資関係の方向性を考える中で、中国企業の対日投資、チャイナ・リスク、リスクヘッジのための戦略、金融危機と中国ビジネスその他について概観する。中国は、国土、人口ともに膨大かつ多様な中、社会主義的市場経済という前例のない独特のメカニズムを維持することで、社会の一体性と経済発展を維持している。本研究は、日本としてこのような中国との戦略的互恵関係を発展させ、特に投資等のビジネス活動を今後さらに発展させるための実務的視点の提供を全体として指向したものである。