テクノロジーとマーケットの複雑性に挑むJSR: その大いなる変貌要因を探る

執筆者 中馬 宏之  (ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2009年11月  09-J-033
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概要

本論の目的は、90年代に石油化学系の事業会社から石油化学とファインケミカルの両輪を操る事業会社へと大きく変貌を遂げたJSR(旧・日本合成ゴム)の事業・組織戦略上の特徴を、2002年から2007年の長期にわたって実施された実地調査に基づいて、経済学・経営学の視点から分析・検討することである。実地調査は、同社の日本・米国・欧州・韓国・台湾にまたがる研究・開発・プロセス・品質保証技術・製造・人事の拠点に対して行われた。調査の焦点は、同社の非石油化学系の三本柱(電子材料系、ディスプレイ材料系、光学材料系)の中の電子材料系、中でも半導体用フォトレジスト(以下:レジスト)事業である。選択の理由は、同事業が、80年代後半以降、合成ゴム事業で培った同社の高分子合成、構造解析、物性・機能評価技術を基盤にしてファインケミカルの会社に大きく変貌を遂げた際の中核事業であったことによる。