産業構造の変化と戦後日本の経済成長

執筆者 吉川 洋  (研究主幹) /宮川 修子  (経済産業研究所リサーチアシスタント)
発行日/NO. 2009年9月  09-J-024
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概要

一国の経済成長/景気循環のプロセスでは、産業構造の変化が重要な役割を果たす。Aoki and Yoshikawa (2002)では、需要の成長率の違いという視点から「古い」産業と「新しい」産業の非対称性を成長モデルの中で考えた。新しい財やセクターが生まれると、はじめは成長するが、やがて天井を迎える。このS字形の成長は基本的に需要の成長と飽和のパターンに基づく。ここから、経済成長を抑制する基本的な要因は既存の財・サービスに対する需要の飽和であり、逆に経済成長を生み出す究極の要因は新しい財、セクターの創出となる。「需要創出」的イノベーションにより生み出される財/産業/セクターは、それぞれ異なるプロダクト・ライフ・ヒストリーをもつだろう。本論文ではこのような問題意識に基づき、戦後半世紀の日本の経済成長を産業構造の変化との関連で「スカイライン・ダイアグラム」により分析する。さらに国際比較も行う。

すべての産業が均一に成長するような経済成長は現実には存在しない。産業間に大きなばらつきを伴う経済成長が、結果として産業構造の変化をもたらす。逆に、技術進歩が旺盛で需要の所得弾力性も高い「成長産業」へと、産業構造がスムーズに転換できた経済の成長率は高くなるにちがいない。成長する産業、衰退する産業の変転は、技術と需要のダイナミックな変化によって生じるものである。「少子高齢化のもとでの経済成長」を考えるときには、産業構造のスムーズな転換が結果的にTFPの上昇に結びつくことを忘れてはならない。産業構造の変化は少子高齢化のもとでの経済成長にとっても鍵を握る重要な論点である。