都市の空間構造と小売り販売額の分布-NEGポテンシャルモデルによる分析-

執筆者 中村 良平  (ファカルティフェロー) /髙塚 創  (香川大学)
発行日/NO. 2009年8月  09-J-022
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概要

本稿では、人口と小売販売額に関して、それらの都市内における空間分布を町丁目データとしてとらえ、都市内における販売額(の分布)が人口分布も考慮に入れた都市の空間構造によってどのように説明されるかについて、NEG(New Economic Geography)のポテンシャルモデルを用いて定式化し、その推定を試みた。対象とした都市は、地方に位置する政令市を除く県庁所在都市である。

推定されたパラメータを用いて、都市内交通の改善がもたらす影響とコンパクトシティ政策を念頭においた影響に関して、岡山市を対象としてシミュレーション分析を実施した。1つは、都市内の距離抵抗の低下によって、より郊外の事業所ほど販売額を大きく伸ばし、逆に都心部の事業所ほど販売額を減少させることが示された。もう1つは、例えば、郊外部の人口と事業所をともに1割程度都心部にシフトさせると、都心部の事業所においては約3.4%販売額が増加し郊外部の事業所においては約2%販売額が減少することが示された。