家庭向け電灯料金制度の定量的評価分析

執筆者 戒能 一成  (研究員)
発行日/NO. 2009年6月  09-J-015
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概要

現在の家庭向け電灯料金制度の大部分においては、低所得層への負担軽減という社会政策上の目的から少量消費分の料金を軽減し、省エネルギー推進というエネルギー環境政策上の目的から多量消費分の料金を重科するという「3段階料金制度」が実施されている。

当該「3段階料金制度」は1974年に実施されてから30年以上が経過するが、当該制度が実際に低所得層への負担軽減効果や、省エネルギー効果を依然として持っているのか否かを、総務省「家計調査報告」における所得5分位別・世代層別電気代支出額などの公的統計値の推移を解析することにより、定量的に検証し評価分析することを試みた。

評価分析の結果、「3段階料金制度」のうち第1段階の料金軽減については、家計所得最下位20%層の家計消費に占める電気代支出比率は増加を続け、所得階層間での相対的な電気代負担の関係は過去30年間変化がないこと、当該家計所得最下位20%層は60歳以上の高齢者層と重なることから、なお一定程度の社会政策上の効果を有していると評価された。

また「3段階料金制度」のうち第3段階の料金重科については、世帯当電気代支出が多い中上位所得層や50代の世代層など、明らかに第3段階料金を相対的に多く利用している層においてのみ明確な価格効果が観察されることから、価格効果を通じた省エネルギー効果が一定程度機能していることが示唆された。

但し、当該評価は現行制度の効果に関するものであり、電灯料金制度により低所得層などに対する社会政策を実施することの妥当性や、電灯料金制度の重科を更に強化した場合の省エネルギー効果などについて予断を与えるものではないことに留意ありたい。