コメの生産性ショックと輸出制限を考慮した日本の食料安全保障のシミュレーション分析

執筆者 田中鉄二  (School of Oriental and African Studies, University of London) /細江宣裕  (政策研究大学院大学)
発行日/NO. 2009年5月  09-J-009
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概要

農産物の貿易自由化に関する従来の研究のほとんどは貿易障壁撤廃の直接的影響のみに焦点を当ててきた。自由貿易は経済の効率性を高める一方で、輸入国は対外依存度を深め、供給を不安定にする可能性がある。すなわち、農産物の貿易自由化は食料安全保障を不確かなものにする可能性があり、日本政府はこれを国内コメ市場の開放を拒む主な根拠のひとつとしてきた。国内農業保護論者が想定する主な不安要因として、農産物輸出国における不作のような自然要因や、戦争、輸出制限のような人為的な要因が考えられる。本稿では世界各国で生産性ショックが発生するものとし、コメの貿易自由化を行ったときに、日本が食料安全保障を確保できるかをシミュレーション分析した。その結果、輸出国における不作の可能性を考慮したとしても自由化が日本の経済厚生を悪化させる可能性がないことが明らかになった。