今、公正性をどう考えるか:組織内公正性論の視点から

執筆者 守島基博  (一橋大学)
発行日/NO. 2008年10月  08-J-060
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概要

現在多くの企業や組織で、資源分配の格差を低く保つことで、公正性を確保しようとする平等原則(準平等原則)から、組織や企業への貢献度に応じて資源を分配する(つまり、報酬を払う)衡平原則の考え方に大きく移行している。だが、実際は衡平原則による公正性の確保には多くの困難が伴う。そのため、衡平原則がもたらす不公平に対して、事後的にどう対応していくかに関する議論が盛んになってきた。

なかでも、企業場面においては、補完的に「過程の公正性」の考え方を活用し、資源分配を不衡平だと従業員や組織成員が認識する場合の救済を行う場合が多くなってきた。衡平原則によって分配結果の公正性を確立することが難しいことを前提として、分配を受ける人(労働者)が、分配決定過程に部分的に参加したり、事後的な紛争処理を行ったりすることで確立される公正性である。

本稿ではまず、準平等原則から衡平原則への移行の困難さを解説し、衡平原則の問題点を部分的に補完する、「過程の公正性」の考え方を解説する。さらに04年と05年に行われたアンケート調査を、企業業績データと組み合わせて分析し、過程の公正性施策が、労働者の納得感だけではなく、企業業績にも貢献する可能性があることを示す。特に労使協議のための常設機関や、働く人が苦情を申し立てる仕組みなど、企業レベルでの過程の公正性確保のための仕組みを導入することが、企業業績との関連ではで重要なことが示唆される。