執筆者 |
齋藤経史 (科学技術政策研究所) /大橋 弘 (ファカルティフェロー) |
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発行日/NO. | 2008年10月 08-J-059 |
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概要
日本では宅地等への転用目的で農地を売却する場合、周辺の宅地価格に近い額でしばしば取引されている。この転用目的での農地価格は、耕作目的にて取引される農地価格に比べて高額で取引される傾向にある。そのために農家は転用目的で売却できる機会を期待して農地を手放さず、結果として農業における耕作規模の拡大を阻害しているとの指摘がある。本論文では農地転用による期待収入が、稲作の経営規模および生産性に与える影響について離散選択モデルを用いて定量的に分析した。シミュレーション分析の結果、転用目的での農地売却価格が耕作目的での売却価格にまで低下すると、平均的な稲作の作付面積は約30%増加し、労働生産性も約23%向上することが分かった。本分析から農地の転用収入への期待が存在することによって、農業経営の大規模化および生産性向上が妨げられていることが実証的に裏付けられた。