90年代における稼働率の低下とTFP

執筆者 宮澤健介  (東京大学 / 学術振興会)
発行日/NO. 2008年10月  08-J-054
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概要

TFPの推計は経済分析の基礎であり実務上も重要であるが、理論上・実証上の問題から常にその精度の問題が指摘されてきた。90年代以降の日本においてはTFP成長率の低下が観察されるが、この低下には本来TFPが含むべきではない稼働率の効果が混入している可能性が指摘されている。しかし稼働率のデータが十分ではないため、稼働率の効果を取り除いた真のTFPを推計するためにはまず稼働率を推計する必要がある。稼働率の推計に関する従来の研究には(1)理論的に代理変数を求める方法と(2)経済産業省の稼働率指数を用いる方法が存在するが、前者には代理変数の正しさを検証することができない、後者には稼働率指数のガバレッジが不十分である、という問題がある。本論文では両者をハイブリッドすることでそれぞれの問題を回避した製造業の資本稼働率を推計し、その影響を除外した製造業のTFPを提示する。