過剰就業(オーバー・エンプロイメント)―非自発的な働きすぎの構造、要因と対策

執筆者 山口 一男  (客員研究員)
発行日/NO. 2008年9月  08-J-051
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概要

本稿はオーバー・エンプロイメント(過剰就業)とアンダー・エンプロイメントの双方を含む就業時間のミスマッチについて、わが国に過剰就業が広範に存在していることをまず示した後、過剰就業とその要素である非自発的フルタイム就業と非自発的超過勤務についてその構造と要因を明らかにする。過剰就業は、希望就業時間以上に実際の就業時間があることで定義され、他の条件が同じなら実際の就業時間が多いほど、希望就業時間が少ないほど、また希望と実際の関連度が低いほど過剰就業が生まれやすいが、実際には相対的に希望就業時間の多いパート・臨時と比べた常勤者や、女性と比べた男性,の方に、希望就業時間の差の影響を上回る実際の就業時間差の影響があって、常勤者や男性の方が過剰就業になることを示し、また常勤者の場合は短時間勤務、男性の場合は残業なしのフルタイム勤務、といった特定の就業時間希望が、それぞれパート・臨時や女性と比べて特に実現しにくいことから過剰就業が生じることを示す。また時間的に柔軟な職場は過剰就業度を大きく減らすこと、管理職は他の職より過剰就業度が大きいこと、通勤時間が大きいことが非自発的フルタイム就業を増やしていること、男女の過剰就業度の差は、6歳未満の子を持つ場合に企業の性別による対応の違いにより、最大となること、などを示す。最後に今後のわが国における過剰就業の緩和への道筋について議論する。