サービス業における需要変動と生産性-事業所データによる分析-

執筆者 森川 正之  (上席研究員)
発行日/NO. 2008年8月  08-J-042
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概要

本稿では、「生産と消費の同時性」という特徴を強く持つ対個人サービス業を対象に、時間的な需要変動と生産性の関係を、事業所レベルのマイクロデータを用いて分析する。空間的な需要密度と生産性の関係を扱った森川(2008)と対をなすものである。そもそも狭義のサービス業を対象とした企業又は事業所レベルでのTFPの計測自体が内外を問わず少ない中、事業所毎の需要変動に関する情報を含むユニークなデータを用いた生産性計測の試みである。対個人サービス業では時間帯、曜日、季節を通じた需要の変動が著しい業種が多いことから、それら業種の生産性向上のための政策を考える上でも重要な研究課題である。

分析結果によれば、多くの業種において週内の曜日間や年間の需要変動が大きい事業所ほど計測される生産性が低いという負の関係が確認される。この効果は量的にも大きく、需要変動度が1標準偏差大きい事業所の生産性は10%~20%程度低い。この結果は、年次有給休暇の取得率向上等を通じた休日の分散化が、自由時間に対する需要弾性値の高い対個人サービス業の生産性に対して需要平準化を通じたプラスの効果を持つ可能性があることを示唆している。