Structural Modeling of the Value of Patent

執筆者 鈴木 潤  (ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2008年8月  08-J-039
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概要

イノベーションと特許の関係については、膨大な数の先行研究が蓄積されてきた。それらの研究を通じて、特許には多くのノイズが含まれており、個別特許の価値という側面で補正しない限り、特許数の単純なカウントはあまり有用な指標とはいえないことがわかっている。このような個別特許の価値を示す指標を得ようとする研究(すなわち価値の高い特許の特性とはどのようなものかを探る研究)から、数々の価値指標が提案されている。しかしながら、従来の研究は主に特許の保有から得られるビジネス上の価値あるいは私的価値に焦点が当てられ、技術的な知識としての価値や社会的価値についてはあまり取り上げられてこなかった。2007 年に実施されたRIETI 発明者サーベイでは、発明者に個別特許の価値を聞く際に広い概念の用語を用いたことが、結果的に、特許の価値の背後に存在する複数の因子と、それらがどのように影響を及ぼしあっているのかを分析するための非常によい機会を与えてくれることとなった。本研究は、RIETI 発明者サーベイのデータと構造方程式モデリングの手法を用いて、特許の持つ技術的価値とビジネス上の価値の関係、およびそれらに影響を与える潜在因子を明らかにすることを目的とするものである。また、これらの関係が技術分野により大きく異なっていることをあわせて示す。