社会保障・税制と所得分配・経済成長-政策効果の概算-

執筆者 森川 正之  (上席研究員)
発行日/NO. 2008年7月  08-P-004
ダウンロード/関連リンク

概要

本稿は、社会保障制度や税制の変更が、所得分配と経済成長に対して持つ長期的な効果を概算するものである。

政策の組み合わせによって所得分配と経済成長への効果には大きな違いが生じる。法人税の軽減、社会保障制度の縮小は成長促進的だが所得格差を拡大する。所得税の累進制強化、社会保障制度の拡充は所得格差を縮小するが、経済成長にはマイナスの影響を持つ。複数の政策目標がある場合には複数の政策手段が必要であり、各政策目標に対して効果の高い政策を割り当てることが適当である。

成長促進と経済格差の縮小がともに重要な政策目標だとすれば、経済成長に強く効く政策と所得再分配に強く効く政策を組み合わせることが必要となる。例えば法人税率の引下げと低所得層を対象とした給付(還付)を組み合わせることなどが考えられる。ただし、各政策目標にどの程度のウエイトを置くかによって具体的な政策パッケージは異なる。

本稿の分析は基礎データを含め多くの制約の下での暫定的なものである。社会保障国民会議も指摘しているように、個別具体的な制度設計においては、客観的なデータに基づいて精緻な分析を行い、的確な制度選択ができるようにすることが望ましい。