同族企業の生産性-日本企業のマイクロデータによる実証分析-

執筆者 森川 正之  (上席研究員)
発行日/NO. 2008年7月  08-J-029
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概要

本稿は、日本企業数千社からなるユニークなデータセットを使用し、企業の過半を占める「同族企業」に着目して、企業の所有構造(株主構成)と生産性上昇や経営目標の関係について分析するものである。

分析結果によれば、同族企業と非同族企業の経営目標や経営成果には定性的・定量的な違いがある。すなわち、(1)同族企業は、企業規模、企業年齢、産業等をコントロールした上で、生産性上昇率(労働生産性、TFP)が有意に低い。(2)他方、同族企業は企業の存続を重視しており、存続確率が高い。(3)同族企業が存続する傾向が強いという点を補正した上で同族企業の生産性上昇率が相対的に低いという結果は変わらない。(4)創業者の家族・親族が後継者となっている「二世企業」の経営成果が劣っていることを示唆する結果が見られる。

同族企業は非同族企業と経営目標に違いがあり、分析結果は規範的な意味を持つものではないが、オーナー経営者が株式を公開・上場又は第三者に譲渡しようとする際の障壁を小さくし、企業所有構造の選択肢を拡大することが望ましい。