雇用保護は生産性を下げるのか-『企業活動基本調査』個票データを用いた分析

執筆者 奥平寛子  (大阪大学大学院/日本学術振興会) /滝澤美帆  (東洋大学) /鶴 光太郎  (上席研究員)
発行日/NO. 2008年5月  08-J-017
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概要

本稿の目的は、日本の整理解雇規制が企業の生産性に与える影響を検証することにある。まず、解雇規制が企業の生産性に影響を与える経路について、経済理論が示す仮説を整理し、その後、企業の個票データを用いて日本の整理解雇規制が企業の生産性に与える影響を実証的に分析する。分析の結果、整理解雇無効判決が相対的に多く蓄積される時に、企業の全要素生産性の伸び率が有意に減少することが分かった。また、解雇規制の強化によって労働から資本への代替を促す効果は観察されなかったものの、全体としては労働生産性が有意に減少することも明らかにされた。つまり、特定の労働者に対する雇用保護の影響は労働市場にとどまらず、企業の生産性への負の影響を通じて経済全体に影響を与え得る。

※本稿の英語版ディスカッション・ペーパー:11-E-078