日本経済の多地域動学的応用一般均衡モデルの開発
Forward Lookingの視点に基づく地域経済分析

執筆者 伴 金美  (ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2007年11月  07-J-043
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概要

本論文は、日本的視野に基づいて地域経済の動向に影響する要因を分析するため、8地域22産業部門からなる多地域動学的応用一般均衡モデルを開発し、様々な経済環境の変化が、時間的視野で地域経済および日本経済に影響する様子を、数値シミュレーションの手法により明らかにする。本論文で取り上げられる経済環境の変化は、財政負担・便益格差の是正、労働力人口の減少、企業減税、交通・通信技術のイノベーションなどである。本論文で用いられている動学的応用一般均衡モデルは、平成12年試算地域間産業連関表に基づく社会会計表をベンチマークデータとし、多段CES型生産関数と効用関数に基づいて企業と家計の行動方程式が導出され、さらに、動学的メカニズムとして、各地域においてRamsey型最適成長モデルに基づく貯蓄・投資の決定がなされる枠組みが取り入れられている。なお、モデルのパラメータは仮想的なものであり、シミュレーション結果はそれに大きく依存している。分析結果によれば、各地域間の密接な相互依存関係から、経済環境の変化が、一地域にとどまらず、広く他の地域に、かつ時間の経過とともに影響が拡大する。特に、貯蓄・投資が動学的最適成長モデルの枠組で決まるForward Lookingモデルによる分析では、将来の経済環境の変化が事前に予測された時点で経済活動に対して大きな影響をもたらすことが確認できる。その意味で、現在の地域経済の動向は、将来の経済環境の変化を予測した上での動きの一環であると考える重要性も示唆している。