国際技術移転における技術協力援助の役割

執筆者 澤田 康幸  (ファカルティフェロー) /松田絢子  (東京大学経済学研究科) /木村 秀美  (研究員)
発行日/NO. 2007年7月  07-J-032
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概要

本稿は、技術協力援助 (TC) が先進国から開発途上国への技術伝播をもたらすのか、もたらす場合にはそれはどのように行われるのかについて、明らかにする。特に、我々はTCを海外直接投資 (FDI) および対外開放度の役割と比較することによりその技術伝播効果を評価する。具体的には、Benhabib and Spiegel (2005)のモデルを拡張し、これらの3種類の経路がTFPの成長率にどの程度貢献するのかを推計する。また、本稿で用いる計量経済学モデルは、ある国が技術リーダー国に長期的には追いつくのか、あるいは差が開いていくのかという点の識別を可能とする。モデル推計から、頑健な結果が2点見出されている。第1にTC、FDIおよび対外開放度はすべて国際的な技術移転に貢献している。しかしこれらの3つの経路の中では対外開放度が最も貢献度が高く、TCがそれに続く。また、TCは十分な人的資本がない開発途上国の人的資本の欠如を補っているともいえる。第2に、本稿のサンプル85カ国のうち約6カ国から17カ国は36年にわたり技術リーダーの国に追いつくことができていない。これらの結果は、TCが開発途上国の技術的なキャッチアップの促進に重要な役割を果たしうることを示唆している。