託送方式の電力市場におけるキャパシティー選択と卸取引

執筆者 金本 良嗣  (ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2007年6月  07-J-027
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概要

垂直統合型の電力会社が新規参入者に自社の所有する送配電網を貸すという日本型託送方式を分析するモデルを構築し、いくつかの簡単な特殊ケースの定性的な分析を行う。得られた主要な結論は以下である。第一に、託送料金が託送の限界費用と乖離している場合には、電力会社の電力供給に歪みが発生する。託送料金が託送の限界費用より高い場合には、電力会社は自社の供給を絞り、逆に低い場合には、自社の供給を増やす行動を取る。第二に、自社顧客が少なくなることによって、ブランド価値の低下や付帯事業への悪影響等が少しでも出てくる場合には、電力会社は他社の顧客数を増やすような卸し供給を行わない。第三に、電力会社が過剰なキャパシティーを抱えることによって新規参入者の参入を阻止する参入阻止行動が起きうる。