執筆者 |
王淑珍 (北九州市立大学) |
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発行日/NO. | 2007年5月 07-J-021 |
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概要
本稿の目的は、2000年以降、台湾のLCD産業が新規企業の参入によって持続的な進化から急速的な成長に転換した要因を、メタナショナル経営との関連から明らかにするところにある。
台湾は1997年に日本から大型TFT-LCDの量産技術を導入し、1999年から量産を開始した。2002年にはTFT-LCDの総生産高は既に日本を抜き、34.7%のシェアで世界2位の国となった。
しかし、台湾のLCD産業の発展は1970年代からである。1980年代から多国籍企業が進出し始めたが、1990年代中葉までには産業発展のスピードが極めて遅かった。
1997年以降参入した新規企業は、日本と韓国のTFT-LCD企業と異なり、企業規模が過小であり、社内での経営資源は極めて不足していた。それにもかかわらずこれらの企業は劣位の発展条件を克服しLCDのような資本と技術集約的、技術進化が極めて速い産業において発展を遂げたのは、政府によリ産業発展のインフラが整備された以外には、メタナショナル経営の採用もその要因である。前者については、1991年以降資金調達のインフラが整備され、1995年以降大学における修士・博士人材の養成、工業技術研究院(ITRI)における大学との共同研究体制の形成による研究開発人材の提供によって企業の参入障壁が低下した。後者については、これらの企業が台湾と世界において巨大なTFT-LCD市場が存在することを考察したうえで、日本大手企業から量産技術を導入し、台湾の株式市場に上場し資金調達を行い、社内での経営資源制約を克服した。そして導入した資金を積極的に次世代技術開発に投入した結果、企業競争力をつけると同時に企業規模が拡大しつつある。それは台湾のLCD産業が2000年以降、これまでの持続的な進化から飛躍的な成長に転換した原動力である。