機械製造業のグローバル化と生産性に対する影響

執筆者 松浦 寿幸  (研究員) /元橋 一之  (ファカルティフェロー) /藤澤三宝子  (東京大学公共政策研究科/経済産業研究所リサーチアシスタント)
発行日/NO. 2007年4月  07-J-015
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概要

90年代のバブル経済の崩壊や国際競争が激 化する中で日本企業は海外進出を着実に進めてきている。グローバルに活動する企業においては、生産活動の海外移転とともに、国内活動は付加価値の高い分野にシフトさせることによって、企業レベルの生産性を上げていると考えられる。また、グローバル化の進展は企業間の生産資源の再配分を通じて、経済全体として見た生産性に対して少なからぬ影響を与えていると思われる。本論文では、企業活動のグローバル化が顕著に見られる機械産業に焦点を当てて、海外生産が生産性に与える影響について分析を行った。データセットとしては、1995年、2000年及び2003年の工業統計の事業所レベルデータに企業活動基本調査と海外事業活動基本調査の企業レベルの情報を付加したものを用いた。事業所レベルで見た生産性分析を行った結果、海外進出企業、国内企業とも生産性の高い分野に生産活動をシフトさせていることが分かった。ただし、海外進出企業の場合は事業所内の生産性上昇効果が大きく、国内企業の場合は事業所の開業・廃業による生産性効果が大きい。このように企業活動のグローバル化は生産性の高い事業分野への生産資源のシフトを促し、生産性の上昇をもたらしているが、その内容は海外進出企業と国内企業で異なることを示唆している。