共同研究開発における情報共有

執筆者 中馬 宏之  (ファカルティフェロー) /藤村修三(東京工業大学大学院イノベーションマネージメント研究科)/川越敏司(公立はこだて未来大学システム情報科学部複雑系科学科)/松八重泰輔(早稲田大学大学院経済学研究科)/奥野(藤原)正寛  (東京大学大学院経済学研究科) /瀧澤 弘和  (研究員) /渡邊泰典(東京大学21 世紀COE ものづくり経営研究センター)/横山泉(一橋大学大学院経済学研究科)
発行日/NO. 2007年3月  07-J-013
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概要

半導体産業など、今日の先端科学産業では、研究開発投資の巨額化、研究開発のスコープ拡大・複雑化・スピードアップ化、マーケティング不確実性の増大などのため、企業が研究開発を企業境界を超えて共同で行うことが多くなってきている。しかし、企業同士が製品市場において競合関係にあるため、このコラボレーションにおける協力関係は複雑な様相を呈することになる。本稿は、このプロセスにおける企業の私的情報開示と研究開発努力のインセンティブを考察する。これらのインセンティブは、製品市場における競争ゲームが持つ性格と私的情報がそのゲームにどのような影響を与えるかに大きく依存されることが示される。また、いくつかのモデル分析の結果、これらのインセンティブには、各企業の持つ私的な技術情報を評価し、それを歪めることなく伝達するメカニズムの存在が必要となることが示される。この結論は、リサーチ・コンソーシアムにおいて中立的第三者の果たす役割が重要であるという観察事実と一致する。