地域経済統合と競争政策・独禁法

執筆者 瀬領真悟  (同志社大学法学部)
発行日/NO. 2006年8月  06-J-052
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概要

本稿は、地域統合における競争政策・独禁法規定の分析を行う。競争政策・独禁法の国際的側面についてはさまざまな形態がある。国家間取り決めの形態をとっているものの中で、二国間協定形態(二国間協力・共助協定に焦点を当てる)・多角的協定形態(WTOに焦点を当てる)のものと、地域統合形態をとるものとを比較しながら、地域統合形態における競争政策・独禁法規定の性格・内容・機能などを浮き彫りにする。地域統合形態のサーベイにより、実体規定の側面と手続き規定の側面で、参加国法の制定促進・共通化促進機能を強く持つタイプとそうではない緩やかなタイプが併存していることが判明した。この点から、地域統合形態は、二国間協定形態あるいは多角的協定形態が持つ特徴を併せ持つものとなっていることが解る。また、地域統合は、統合度が高くなり、先進国間であるほど競争政策・独禁法についても共通化された規定や中央執行機関を持つものに進むと考えられることがある。しかし、統合が進んだ先進国間統合でも中央執行機関や共通独禁法規定を持たないまま競争政策・独禁法規定について当事国間で高い共通性を維持しようと試みる形態、途上国間統合であっても共通独禁法規定等を持つ形態をとろうとするものもある。更に、本稿では、日本が締結している地域連携協定などにおける競争政策・独禁法規定の特徴を検討した。以上のような統合の背景、内容、運用などの分析により地域統合における競争政策・独禁法規定のあり方についてより豊富な可能性、日本による地域統合におけるこの種の規定のあり方への有意義な示唆が可能となる。