独占的競争等を取り入れた多地域CGEモデルの構築

執筆者 久武昌人  (上席研究員) /山崎清  (株式会社価値総合研究所 経済社会政策グループ主任研究員)
発行日/NO. 2006年6月  06-J-046
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概要

完全競争及び収穫一定の仮定の下に構築されてきた従来の多くの応用一般均衡分析に代わる政策分析のツールとして、不完全競争、規模の経済性等を導入した多地域応用一般均衡分析モデルを構築した。我が国の地域間IO(9地域)を用いて、不完全競争市場、規模の経済性、投入係数可変等の性質を備えたCGEモデルを構築し、その結果を、標準的なタイプのそれと比較した。なお、この課題はCGE特有の問題ではなくモデル分析・予測・評価の作業全てに通じるものであるが、仮定により結果は当然異なってくる。そのため、モデルの前提条件を明示しておく必要があり、その点にも配慮した。

このように、本稿においては、新しい空間経済学がとらえようとしている要素を極力CGEモデルに取り込んだ新しいモデルを構築した。今回のモデル構築により、規模の経済等を取り入れた多地域CGEモデルが、計算可能、実行可能であることが明らかとなった。それのみならず、我々のモデルは、より現実に即したものとなっており、おそらくこれまでに例のないものと考えられるストロー効果の現出等、従来多く用いられてきたモデルと差異のあるいくつかの結果を得ることが出来た。

今後は、このモデルを基礎に、東アジア全体に拡張したモデルを構築することが有力な展開方法として考えられる。これをプロトタイプとして、大規模なモデルの構築を進めることが考えられるところである。その際には、より多くの地域、より多くの産業を考慮したとしても計算可能なモデルを構築する必要がある。そのためのモデルの改善点の検討、所要のデータ整備を進めるためのプロセスの検討、国際的な協力体制の枠組み作り等を行うことが必要となる。今後、こうした方向での様々な取り組みが進展することを強く期待するものである。