人工物の複雑化と製品アーキテクチャ

執筆者 奥野正寛  (RIETIファカルティフェロー/東京大学大学院経済学研究科) /瀧澤弘和  (研究員) /渡邊泰典  (東京大学21世紀ものづくり経営研究センター)
発行日/NO. 2007年3月  06-J-038
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備考 この論文は2006年4月に発表された論文を改訂したものです。

概要

本論文は、製品アーキテクチャ概念の意義を、人間と人工物の分業・協業関係の展開過程に伴う人工物の階層的複雑化という文脈の中で説明する。人工物の階層的複雑化の急速な進展は、多数の部品からなる複雑な製品システムを登場させ、製品システムの全体開発と個々の部品開発をどうコーディネートし、インテグレートするかを重要な課題として浮かび上がらせた。製品開発に関する「開発標準型vs. インテグラル型」という類型化は、そのシステム・コーディネーション/ インテグレーションを、主に人間が行うタイプと、開発標準という人工物を通して行うタイプの区別として理解される。この類型化は、他方における「オープン型」と「クローズド型」という開発作業形態の類型化と関連し、「開発標準型」は「オープン型」と、「インテグラル型」は「クローズド型」と補完性を持つことが示される。最後に、この補完性の主張の上に立ち、ある製品システムの基幹部品を独占的に供給する企業が「開発標準型×オープン型」と「インテグラル型×クローズド型」のどちらを選択するかを分析するモデルを構築し、消費者需要の変動性の程度がこの選択に与える影響を考察する。不確実な消費者選好の分布がより変動的であるとき、独占企業が「インテグラル型×クローズド型」を選択する可能性が高いことが示される。