金本位制のもとでのレジームの役割と物価への波及過程
19世紀デフレの日米比較分析

執筆者 竹森俊平  (ファカルティフェロー/慶應義塾大学) /リュドミーラ・サフチェンコ  (慶應義塾大学)
発行日/NO. 2006年4月  06-J-029
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概要

本論文では、1890年代のアメリカと日本に焦点を当て、通貨体制、レジーム変化の予想、正貨準備といった要因が景気と物価の変動にどのような影響を与えたかを考察する。世界中が金本位制に収束していく中で通貨としての「金」が希少になったことで、この時代の世界的なデフレ傾向が発生したわけだが、当時の日本の通貨は「銀」であったためデフレを逃れた。本研究では銀安の傾向による正貨準備の増加が、日本がデフレを免れた要因であることを検証した。他方でアメリカは、デフレを逃れるための銀本位制の政治的な模索が1890年代初頭におい行われたために「通貨信用の喪失」を招いて、1890年代初頭に深刻な不況とデフレを将来した。この研究では、「資本逃避」から「金準備の減少」という連鎖が「クレディット・チャンネル」を通じて、実体経済と金融セクターにマイナスの効果を及ぼしたメカニズムを明らかにした。また1897年以降のアメリカ経済の回復においても「クレディット・チャンネル」が、さらに一層重要な働きをしたことが明らかになった。