地域銀行のガバナンス
-株主構成変化の含意-

執筆者 植村修一  (上席研究員) /渡辺善次  (慶応義塾大学大学院経済学研究科)
発行日/NO. 2006年3月  06-J-013
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概要

景気回復と株式持合い解消の流れの中で、大手銀行と同様地域銀行の株式も、上位行を中心に外国人投資家が積極的に購入している。地域銀行上位10行の外国人持ち株比率は、2000年3月末の5.6%から、2005年3月末には15.0%へと上昇した。本稿では、パネル分析により、地銀上位行の株式時価総額を決定する変数として、自己資本比率や不良債権比率が有意であることを確認した。さらに、多変量解析の手法である主成分分析を用い、地域銀行の経営パフォーマンスを表す主成分を抽出した。これにより、上位行においては、主成分得点と外国人持ち株比率が有意に正の関係にあることを確認した。株式が流動化した結果、同じ地域銀行においても、株主構成やガバナンスの効き方にかなりの違いが生じている。今後、地域銀行の経営者が、投資家から見た企業価値すなわち株式時価総額の増大をより意識した経営を行うことにより、結果として、銀行間格差が拡大する可能性がある。また、監督行政においては、主要行と地域銀行以下を明確に区分し、地域銀行以下に共通のビジネスモデルを適用するのではなく、経営の自主性をできるだけ尊重し、市場規律を活用する、柔軟な対応が求められる。