無形資産の分類と報告様式の研究

執筆者 山口不二夫  (16年度ファカルティフェロー / 明治大学大学院グローバル・ビジネス研究科)
発行日/NO. 2005年10月  05-J-030
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概要

本稿ではまず、研究対象とする無形資産とは、企業の長期的価値創造にかかわり、必ずしも財務報告書で計数化されていないもの、という広義の概念であることを確認する。次に政府機関、民間機関、研究者や実務家、コンサルタントによる無形資産の分類方法の整理をおこない、おおまかな類型化をおこなう。その際、取り上げるのはプロセス型(デンマーク知的資本報告書)、要素列挙型(アクセル社等の事例)、企業の社会的責任に関する報告書、格付けの局面での定性評価、BSC(balanced score card)などである。これらの方式の検討結果、現状の研究・実践水準において、デンマーク方式は有効性をもちえることを指摘した。その長所と欠点、改善点を提案する。また無形資産報告書の目的が、無形資産経営の方向性をしめすのか、無形資産資源の開示を示すのかという論点に帰着するという点も指摘する。

これらの検討の結果、無形資産の分類方法には、現状では決定的な方法がなく、多くの方法や方式があることを確認する。さらにその多様性の理由をいわゆる無形資産の不可知論的性格とくに他の無形資産との分離不可能性にもとめるが、同時に時代と業界を限定すれば、ある一定の開示様式が可能であることも示唆する。公開する内容と方法については、財務データの公開の事例を参考にして、厳密な基準で細則まで限定する方策より、原則を提示し各社の裁量の余地をのこす方法を提案する。そのさい、無形資産データやその報告書の客観性を担保するために、監査制度の必要性と測定公表方式の改善の必要を述べる。