事業承継と承継後の中小企業のパフォーマンス

執筆者 安田武彦  (ファカルティフェロー) /許 伸江  (慶応義塾大学大学院商学研究科)
発行日/NO. 2005年4月  05-J-018
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概要

わが国の中小企業は、戦後、日本経済が復興し高度成長を遂げ、さらに世界屈指の経済大国に発展を遂げる過程において重要な役割を果たしてきた。こうした中小企業が現在、大きな問題に直面しつつある。

それは、戦後、高度成長期までに開業した企業の経営者が高齢化し、代替わりの時代を迎えたことである。

本論はこうした中で今後、増加することが予想される事業承継について、(1)承継後のパフォーマンスを良好に保つのは如何なる承継者なのか、(2)どのような企業が子息等に承継され、どのような企業が第三者に承継されるのかといった点を独自のデータセットをもとに分析したものである。

分析の結果、(1)事業承継と創業では経営者の年齢、教育といった基本的な企業家の属性が企業のパフォーマンスに与える影響が全く異なること、(2)同じ事業承継でも子息等承継と第三者承継では同じく基本的な属性がパフォーマンスに与える影響が異なること等が明らかになった。

これらの結果は、「第二創業」と称される事業承継においては、(第一)創業と異なるメカニズムが作用していることを示唆するとともに、事業承継は子息等承継と第三者承継で別個に論じる必要性があることを示唆している。