地域データによる開業率の決定要因分析

執筆者 岡室博之  (一橋大学大学院経済学研究科助教授) /小林伸生  (関西学院大学経済学部助教授)
発行日/NO. 2005年3月  05-J-014
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概要

近年、開業率の低迷が続いており、新規開業の促進が重要な政策課題になっているが、新規開業の地域別要因に関する計量的分析は日本ではきわめて乏しい。本稿は、市町村レベルおよび県内経済圏レベルの集計データを用いて、1990年代後半における民営事業所の開業率の決定要因を計量的に分析する。主な説明変数は、需要要因、費用要因、人的資本要因、資金調達要因、産業集積・構造要因、およびその他の要因(企業規模構造、交通アクセス、公共サービス)に区分される。加重最小二乗法によるクロスセクション分析の結果、これらの要因が少なくとも市町村レベルではすべて開業率に有意に影響すること、また市町村サンプルの分析結果と県内経済圏サンプルの分析結果がいくつかの点で共通することが分かった。特に人的資本要因(大卒者比率、専門職・技術職従事者比率)は、賃金水準・事業所の平均規模と並んで、いずれのサンプルでも開業率の重要な影響要因であるあることが確認された。この結果は、地域における人的資本形成・蓄積の重要性を示唆するものである。