中小企業の産学連携と研究開発ネットワーク:
変革期にある日本のイノベーションシステムにおける位置づけ

執筆者 元橋 一之  (ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2005年2月  05-J-002
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概要

日本のイノベーションシステムは、大企業の自前主義が特徴であると言われているが、イノベーションに関する国際競争の激化や研究開発内容の複雑化・高度化に従って、このところ研究開発の外部連携を進める動きが広まっている。本稿においては、このような研究開発ネットワークの形成において重要な役割を担っている研究開発型の中小企業やベンチャー企業の産学連携について、「研究開発外部連携実態調査」(経済産業研究所)のデータを用いた分析結果を示す。

まず、企業年齢が若く企業規模の小さい研究開発型中小企業は、産学連携を行うことによって研究開発活動において高い生産性を確保していることが分った。大学等における基礎的な研究成果を社内の研究開発プロセスに役立てていくためには、自社の技術的キャパシティ(Absorptive Capacity)が重要であるが、研究開発型中小企業においては、具体的な製品開発などその内容についてより明確な成果を意識した産学連携を行うことによって効果をあげてきている。また、このような産学連携などの外部連携を通じて活発なイノベーション活動を行っている中小・ベンチャー企業は研究開発の連携相手としても重要な役割を担っている。特に最近では、研究開発競争が激化する中、自社研究開発の選択と集中を進める大企業にとって、独自の技術を有する多様な中小・ベンチャー企業との連携を進めることの意義は大きい。このように中小企業やベンチャーの研究開発ネットワークは、自前主義では立ち行かなくなった日本のイノベーションシステム改革の起爆剤として今後とも政策的に推進すべきであると考えられる。