技術選択のジレンマを超えて
-ファナックにおけるジレンマの超克-

執筆者 柴田友厚/児玉文雄  (ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2004年12月  04-J-047
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概要

企業が現行技術から新技術への技術転換を、どのようにすればこえることができるのかという課題は、実践的にも理論的にも極めて重要である。一般的に、成功した現行技術を捨てて新技術に移行することは、極めて深刻な経営判断を要求するために、企業はしばしばジレンマに陥る。ファナックは、創業以来40年以上にわたり、NC(Numerical Control,数値制御)装置に関する2回の大きな技術転換を超えて、持続的成長を遂げてきた。本稿では、ファナックがいかにして技術選択のジレンマを超え、2回の技術転換に成功したのかを事例分析し、共通要因を抽出する。その結果、現行技術の限界認識が重要であること、および、現行技術と新技術の同時追求という仕組みによって、2回の技術転換を超えてきたということを明らかにする。その仕組みの妥当性と合理性に関して考察を加え、さらに、既存企業はなぜ失敗するのかという課題に対するより根本的説明論理の可能性に関して議論する。