入職経路が転職成果にもたらす効果

執筆者 児玉俊洋  (上席研究員) /樋口美雄  (ファカルティフェロー) /阿部正浩  (ファカルティフェロー) /松浦寿幸/砂田 充
発行日/NO. 2004年7月  04-J-035
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概要

我が国では、1990年代以降いわゆる雇用のミスマッチが顕著になっており、経済構造改革の進展と経済成長軌道への回復のために、円滑な労働移動を可能とする外部労働市場の整備などが重要な政策課題となっている。このため、我々は、転職者の動向に注目し、特に、労働移動の仲介役を担う入職経路の働きに注目した。

入職経路の働きを把握するため、本稿では、厚生労働省『雇用動向調査』の特別集計及び回帰分析によって、転職者の転職に際しての労働市場成果と入職経路との関係について分析した。この場合の労働市場成果としては、再就職に要する期間(離職期間)と転職前後の賃金変化率を用いた。その結果、「公共職業安定所」に比べて「縁故」及び「前の会社」の労働市場成果への効果が高いことから、入職経路における情報仲介機能の役割が重要と考えられること、「公共職業安定所」についても情報仲介機能の強化などによる労働市場成果向上の可能性があること、「民営職業紹介」の労働市場成果への効果は高くその発展が期待されるものの、就職困難者には対応できず、また、その効果は地方圏においては有意でなくなることから、他の入職経路も引き続き重要であることなどがわかった。