政治的課題としてのコーディネーション;
調整型市場経済における労使関係の変化

執筆者 久米郁男  (ファカルティフェロー) /KATHLEEN THELEN
発行日/NO. 2004年4月  04-J-031
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概要

調整型市場経済の代表例とされてきた、スウェーデン、ドイツ、そして日本の経済は、グローバル化の進む新たな市場環境において、変化の波にさらされてきた。本論文は、中でもこれら3カ国の政治経済体制の重要な構成要素であった労使関係制度、すなわちスウェーデンにおける連帯主義的賃金交渉、ドイツにおける産業別賃金交渉制度、そして日本における「年功賃金制度」と「終身雇用制」が、どのような変化の圧力に直面し、いかなる変化を被ってきたかを、労働組合の対応よりもむしろ経営者側の調整能力に注目して分析した。そこでは、3カ国の労使関係制度に変化と同時に、伝統型の制度を存続させる二つのモメントが併存していること、そしてこれら二つのモメントが新たな緊張を生んでいることを明らかにした。