資格と一般教育訓練の有効性-その転職成功に与える効果

執筆者 阿部正浩  (ファカルティフェロー) /黒澤昌子/戸田淳仁
発行日/NO. 2004年3月  04-J-028
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概要

本稿の目的は、近年その重要性を増している個人による人的投資が所得や転職にどう影響しているかを検討することである。本稿では、個人の人的資本投資への資金的制約を緩和すると考えられる教育訓練給付金制度について、その利用実態をアンケート調査より明らかにし、給付受給者と非受給者の所得を比較することを通してその効果を計測している。また、ある民間人材紹介会社の業務データを用いて、転職における資格の有効性を検証することも行った。分析の結果、以下のような事実が観察された。

(1)企業内訓練の対象外とされやすい長期失業者や多数の非正規就業者は教育訓練給付についても利用対象外にされており、とくに就業者のなかでも、30歳以降の女性の対象者比率が男性に比べて大きく下回っていることがわかった。また、給付金制度が対象とする教育訓練はどの企業でも通用すると考えられるスキルの形成を行うと考えられるが、我々の分析ではその所得面への影響を捉えることは出来なかった。給付金が対象としている教育訓練が職務上の能力を高めていないという可能性もある。

(2)資格は人的投資の結果としてのスキルレベルを公的に示すメルクマールであるが、それは転職内定に対しては効果を持たないが、書類通貨には通過確率を高めるという効果はあることが確認された。また、IT関連業種においては、資格は有意に転職内定を高める効果があった。