日本農業の国際化と政治・農協の変革

執筆者 本間正義  (ファカルティフェロー) /Aurelia George Mulgan/神門善久
発行日/NO. 2004年3月  04-J-024
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概要

世界貿易機関(WTO)での農業交渉は開発途上国と米欧の対立が解けず手詰まりの状態にあるが、交渉の目的が保護の削減である以上、世界の農業市場開放の流れが変わることはない。また、近年、地域自由貿易協定(FTA)締結への動きも活発であり、そこでも農産物の扱いが重要な鍵となっている。こうした農業の国際化は国内農業農政の変革を求めることになるが、その実際はどうであろうか。本稿では、農業の国際化を受けて、日本の農業がどのように変わろうとしているのか、どう変わればいいのかを、農業を取り巻く政治の変革、そして最大の農業団体である農協の変革の分析を通じて検討する。

本稿は3部構成になっている。まず、第1部(農業の国際化)では、農業の国際化の背景や農業保護の源泉について考察しながら、今のWTO農業交渉の経緯と論点、またFTAにおける農業問題、さらには対外交渉における日本の主張や対応について検討する。次に第2部(日本農業の「新たな」政治システム)で、農業交渉での日本の姿勢を規定している国内政治について政治学的な分析を行う。農業は極めて政治に近い産業であるが、古いシステムから新しい政治が現れる芽はあるのか、日本農業の構造改革を可能にするような政治敵条件とはなにか、などについて検討する。さらに、第3部(農協問題の本質)では農業政策の末端の実行部隊と言われてきた農協について、その問題点と農業協同組合のあり方について検討する。特に、多様な農協の出現を可能にする条件整備について論じる。  

これらの分析を通じて、今後の日本農業のあり方を探ることが、本稿の目的である。