憲法における公会計制度の位置付けについて

執筆者 桜内文城  (ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2004年3月  04-J-022
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概要

本稿は、憲法を国家の意思決定の仕組みを定める法規範として捉えた上で、その中で公会計制度の位置付けを検討したものである。あらゆる国家の意思決定には権力性の契機(意思決定を行う権力の帰属)と正当性の契機(意思決定の内容の正当性)が要求されるが、公会計制度はこのうち後者を具体的な金額で示すものである。特に国家の意思決定に参加することができない将来世代の利益は人権として制度化されていないため、法の支配を通じた保護も及ばない。しかし公会計制度は、将来世代の受益と負担を数字で代弁することを通じて、国家の意思決定をその利益の方向性に合致するよう規律付ける機能を有している。公会計制度の核心は多数者の意思である立法によっても侵すことは許されないという意味で、憲法上の制度的保障の対象とすべきものであろう。