財政規律・国債管理と金融政策

執筆者 渡辺 努  (ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2004年3月  04-J-011
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概要

株式市場が企業経営を規律づけるのと同じように国債市場は財政運営を規律づけている。本稿では市場を通じた財政規律のメカニズムについて考察する。主なファインディングは以下のとおりである。第1に,市場規律には国債価格を通じる経路と自国通貨価値を通じる経路の2 つのチャネルがある。財政事情が悪化すると,国債価格が下落すると同時に,物価上昇・自国通貨下落が生じる。これらの価格変化は政府に対して財政再建の圧力を加える。第2に,市場規律を十全に機能させるには中央銀行の積極的な関与が不可欠である。財政事情が悪化する状況では金融政策の操作変数である短期名目金利を引き上げることにより政府に対して警告を発する必要がある。第3に,市場規律には相対評価原理に基づくという限界がある。財政事情の悪化にもかかわらず国債価格が上昇し物価下落・円高が進行するという2000年夏以降の状況は,この限界が顕在化したものと解釈できる。