日本の財政問題:問題意識と解決のための処方箋の切り口

執筆者 鶴 光太郎  (上席研究員)
発行日/NO. 2004年3月  04-J-006
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概要

90年代の財政問題の深刻化の背景には、大規模の財政出動のみならず、バブル崩壊以降のマクロ経済状況の構造的変化に歳出構造が柔軟に対応できなかったという面も大きい。また、93年の自民党単独政権の終焉から連立政権に移行し、「政治的断片化」も進み、財政膨張要因になったことも否めない。このため、喫緊の課題として重要な財政赤字削減のための改革としては、(1)予算プロセスの意思決定の権限を独立した機関へ集中化させること、(2)2~3年のタームで数値目標を設定することが、その「両輪」として重要である。一方、予算制度の効率性向上のため中長期的視点で取り組むべき改革としては、省庁一括配分・事後評価、複数年度制、赤字・建設国債の区分見直しなどが挙げられる。ただし、既存の制度と比較すると、「規律」と「柔軟性」のトレード・オフは厳然と存在するため、このトレード・オフをできるだけ改善できるような条件整備、具体的には、予算制度の透明性の向上を図ることが必要である。税制については、これまで制度を複雑化させてきた各種控除、租税特別措置を整理・合理化し、課税ベースを拡大するという改革がまず必要である。その上で、国民に対し財政の現状、将来を真摯な態度で明らかにし、国民の信頼と支持を得ることで、消費税増税等の必要性への理解を求めていくべきである。