変革を迫られている国立大学附属病院
-法人化によってどう変わるか-

執筆者 川渕 孝一  (ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2004年2月  04-P-002
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概要

本研究では、国立大学が平成16年4月から非公務員型の独立行政法人に移行することを踏まえ、国立大学附属病院の経営分析を中心に、どうすれば経営改善が可能になるかを検討した。その結果、医学部附属病院(医病)では、筑波大学がトップとなったが、患者重症度を示すケースミック・インデックス(Case Mix Index=CMI)を加味して医業収支別ランキングを行った所、鹿児島大学がトップになり、筑波大は4位に後退した。

また、CMIと経営成績、さらには各病院の医師数・看護師数とは全く相関がなかった。これは、「重症度患者が多いから経営成績が悪い」のではないことを示すとともに、わが国の医療資源の配分に歪みがあることを示唆するものである。さらに、医療の質を示す指標として医療事故率を採用する一方で、経営の質を示す指標として、CMI調整前・後の医業収支率および経営収益に占める補助金収入の割合との関係を調べた所、両者には全く相関がなかった。さらには、医療の質を示す指標と100床当たりの医師数の看護師数およびCMIとの関係を調べた所、両者にも相関がなかった。これは医療スタッフが多いからと言って、医療事故が少なくなるわけではないことを示唆するとともに、患者重症度と医療事故には一定の相関はないことを示すものである。

この他、本研究は厚生労働省が推進する在院日数短縮化は、政策の意に反して、医療費の増大を招くことも判明した。より精緻的な経済分析を行う上でも、患者の個票データの公開が求められる。