銀行統合促進政策の効果:1927年銀行法の評価

執筆者 岡崎哲二  (ファカルティフェロー) /澤田充
発行日/NO. 2004年1月  04-J-002
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概要

本論文は、戦前日本の銀行法(1927年)のケースに焦点を当てて、政策的な銀行統合の効果を定量的に評価したものである。すなわち、銀行法の最低資本金規制が銀行統合促進政策の有力な手段とされたことに着目して、政策的統合と銀行の戦略的インセンティブに基づく統合を識別し、両者が銀行の預金吸収力と収益性に与えた効果を定量的に比較した。預金吸収力に関しては、政策的統合は強い正の効果をもっていたことが確認された。一方、収益性については、政策的統合の負の影響が確認され、特に統合に参加した銀行数が多いケース、銀行間の力関係が明確でないケース、市場内で統合したケースで強い負の効果が認められた。これらの結果から、金融システムが大きな負のショックさらされていた当時、預金吸収力を高めた点で、政策的統合は金融危機を緩和する役割を果たしたということができる。他方、対等合併や参加銀行数が多い統合など組織の調整が困難なケースでは、政策的統合は、むしろ銀行の収益性を悪化させるというマイナスの効果をともなった。