産学連携の実態と効果に関する計量分析:
日本のイノベーションシステム改革に対するインプリケーション

執筆者 元橋一之  (上席研究員)
発行日/NO. 2003年11月  03-J-015
ダウンロード/関連リンク

概要

本論文においては、日本における産学連携の実態に関して詳細な調査を行ったRIETI産学連携実態調査と企業活動基本調査(経済産業省)の接続データを用いて、産学連携の決定要因、企業の研究開発や生産活動における生産性への影響について定量的な分析を行った。分析のフォーカスとしては、大企業と中小企業の規模間格差、企業の年齢による産学連携の効果の違いに置いた。まず、RIETI産学連携調査からは、中小企業は大企業と比較して技術相談や共同研究を通じて、より製品化に近い技術の獲得を目指していることが分かった。その一方で大企業においては技術力の状況や人材育成など長期的なメリットをねらった産学連携により大きなウェイトをおいている。また、産学連携への取り組み度合いは企業規模と正の相関関係を持つが、規模の小さい企業においては企業年齢の若い企業ほど活発な取り組みを見せており、技術開発リソースに乏しい中小企業においては、積極的に外部リソースの活用を図り、産学連携に対するコミットも大きいことを示している。更に、産学連携は企業の研究開発や生産活動における生産性に対してポジティブな影響を持つことが確認された。また、この影響については、企業年齢の若い企業において強く現れていることが分かった。日本のイノベーションシステムは、大企業を中心とした「自前主義」と言われており、産学連携についてもこれまで活発に行われてこなかったが、このところ中小企業、特に企業年齢が若い企業においてその成果があがりつつある。今後、イノベーションシステムをネットワーク型でオープンなものに変えていくためにも産学連携におけるダイナミックな研究開発型中小企業の活動を一層促進することが重要である。