半導体生産方式におけるUMCJの強さを分析:トヨタ生産方式の半導体版?

執筆者 中馬 宏之  (ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2003年1月  03-J-001
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概要

90年代における我が国半導体産業の国際競争力の低下要因として、研究開発部門におけるイノベーション能力の低下やそれらをもたらした経営判断の遅れが強調されることが多い。たしかに、これらの主張には真に迫るところがある。ところが、我が国半導体デバイスメーカーを詳細に観察してみると、研究開発部門のみならず、あるいは、それ以上に製造部門や生産技術部門の弱体化が著しい。その状況は驚くほど深刻であり、同産業の復権には、研究開発部門のみならず製造・生産技術部門の再生・強化策をも不可欠であるとの感が強い。本論の目的は、このような現状認識に基づきつつ、我が国半導体デバイスメーカーの製造部門のありうべき再生・強化策を、UMCJの生産システムを通して探ることである。 UMCJを取り上げるのは、同業他社に比べそのパフォーマンスの高さが際立っているためであり、同社には、同業他社からの訪問・ベンチマーク依頼が相次いでいるという。実際、生産性に関する諸指標をベンチマークを実施した同業5社平均とで比較すると、サイクルタイムを含めたいずれの項目についても、同社の水準は、5社平均を凌駕している。このような同業他社との大きな格差の背後に、どのような生産システムの違いが存在しているのだろうか? そのような違いをもたらしている主因は何だろうか? そのような生産システムは、どうすれば他社においても実践可能なのだろうか? 本論では、これらの点について、同業他社への調査結果と比較参照しつつ試論を提示する。