日本のバイオ・テクノロジー分野の研究開発の現状と3つの課題

執筆者 中村 吉明  (研究員) /共著  小田切宏之
発行日/NO. 2002年2月  02-J-003
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概要

昨今、全世界的にバイオ・テクノロジー分野の研究開発が加速度的に進み、それらのビジネス化が進んでいる。日本もその潮流の中にあるものの、そのバイオ・テクノロジー分野の現状が必ずしも明らかでない。そこで、まず各種公開データを用い、その現状を明らかにした。その結果、米国と比較して産学のバイオ・テクノロジー関係のプレーヤーが少なく、学術成果に関しても、他国と比較してインパクトのある研究成果を出しておらず、特許に関しても、日本の他の分野と比較して競争力がないことがわかった。

さらに、日本のバイオ・テクノロジーの研究開発に関する制度的・構造的問題について整理した。第一点は、バイオ・テクノロジー分野のイノベーションに関するボトル・ネックを他の分野のイノベーション・モデルと比較して論じた。その結果、日本のバイオ・テクノロジー分野では、特許化した発明をさらに実用化する機能に欠けているという点を指摘した。第二に、バイオ・テクノロジー分野の特許に関して、発明者の権利の保護とイノベーションの促進の機能を両立する制度を作るべきであると提言した。第三に、バイオ・テクノロジー分野の政策決定メカニズムについては、「仕切られた多元主義」によって、4省がその政策目的に応じて、バイオ・テクノロジー分野の政策を担当しており、非効率な行政を行っていること、それらを効率化するためには、総合科学技術会議が今以上のリーダーシップを取る必要があることを指摘した。さらに、各省の事業を効率的に行うため、各省の政策を実際に行う実施主体の選定については競争的な方法で選定するとともに、一部の研究者に研究費が集中するような現状を回避するような制度を構築すべきであると提言した。