ノンテクニカルサマリー

日本における株主エンゲージメント代行業者の実証分析

執筆者 Marco BECHT (ブリュッセル自由大学)/Julian FRANKS (ロンドン・ビジネススクール)/宮島 英昭 (ファカルティフェロー)/鈴木 一功 (早稲田大学)
研究プロジェクト 企業統治分析のフロンティア
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このノンテクニカルサマリーは、分析結果を踏まえつつ、政策的含意を中心に大胆に記述したもので、DP・PDPの一部分ではありません。分析内容の詳細はDP・PDP本文をお読みください。また、ここに述べられている見解は執筆者個人の責任で発表するものであり、所属する組織および(独)経済産業研究所としての見解を示すものではありません。

融合領域プログラム(第五期:2020〜2023年度)
「企業統治分析のフロンティア」プロジェクト

本論文では、外国や日本の機関投資家が株式を保有する企業に対して、彼らに代わって対話を行なうサービスを提供するガバナンス・フォー・オーナーズ・ジャパン(GOJ)の内部資料を検証する。

通常、企業と投資家の対話は、非公開で行なわれ、外部からは観測できない。我々は、GOJの対話記録に基づき、どのような目的意識を持って企業経営への改善提案を行い、実際に企業行動に影響を与えることができたかどうかについて、分析した。

我々は、GOJの対話が実際に結果につながるアクションを企業が起こす比率が高く、対話した39社のうち、8割にあたる32社が何らかのアクションを起こしていることが判明し。また、企業のアクションの発表日を挟んだ11日間に、株価が約2.6パーセントのプラスの超過収益を生んでいることを確認した。複数のアクションを起こした企業について、発表日毎の超過収益を合計すると、6.5パーセントとなることも分かった。

筆者たちは、公開の場で、アクティビスト(物言う株主)が、株主提案や書簡を通じて企業に経営改善を要求したケース(135件)も分析したが、こちらは約3分の1にあたる45件しか、企業からアクションを引き出せていないことが分かった。企業がGOJの行なっているような非公開の対話に応じてアクションを起こす可能性は、公開の場でアクティビストが要求する場合に比べてより高いことが分かった。

表:GOJの対話内容別の件数と案件の達成状況
表:GOJの対話内容別の件数と案件の達成状況
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